アリスの教練場
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エピローグ・書斎
真理 「……や、やったー!勝ったんだよ、私たち!」 ツルハシを掲げて二人の方を見よう。
ペンネ しばらく警戒しつつ、安全がわかったら大きく息をついてへたりこむ。
「……そうね。よかった……でも、そのツルハシはおろしてくれる? さっき(幻覚)の思い出しちゃうから」
真理 「さっき……? えっ、わ、私そんな事してた……?」 目を丸くしつつも降ろそう。
ペンネ 「おつかれさま、ふたりとも。イェロウはだいじょうぶ?」
イェロウ 「……ああ。大丈夫も何も、俺は一度も攻撃を受けちゃいねーぜ? 圧倒圧倒、当然の結末だ」
一時的に発狂はおさめましょう。
真理 「そ、そう……そうだよね!う、うん!無事なら良かった!」
ペンネ (さっきの豹変はただ興奮してただけかな……) と解釈してイェロウの答えに頷く。
GM さて。お前たちが勝利を喜んでいると。目の前に、今や幾分見慣れたニヤニヤ笑いが現れる。
暫く待っていれば……そこにはチェシャ猫の末裔。
キュリオ 「おめでとう、愛しい救世主たち。君たちは晴れて、この教練場を『卒業』したというわけだ」
ぱちぱちぱち、と手を叩きながら。
真理 「あっ……そうだ!見てよほら、私たち勝ったよ!」
ペンネ 「流されてただけって言う気もするけどね……」 ぐったりしたまんま特に礼も返さず。
イェロウ 「ふん、俺が唯一の救世主とやらになったって、絶対お前には感謝しねえぜ」
キュリオ 「別に感謝する必要はないよ。これは君たちの実力で勝ち取った結果だからね。
 勿論、唯一の救世主への道も。これから君たちが自分自身の力で進んで行くんだ。
 ここから先は、君たちの思うまま望むまま……あ、ここに居座るのはダメだよ。明日には建物ごと引き払うチェシャの末裔たちには多かれ少なかれ転移能力が備わっている。中には建物ごと転移させる事ができる者もいるとか予定だからね」
ペンネ 「えっ」 しばらくここでキュリオを使いつつのんびりしようとしていた世界観を読み直そう人。
真理 「う……ここともお別れかぁ……そうだ!それならカボチャ持って行かないと!」
キュリオ 「あー、そうだね。この建物のものは、好きに持って行ってくれて構わない。食料とか水とか。
 カボチャ、実は貴重品一部を除き、堕落の国の汚染された土壌と水では作物がまともに育たない。イェロウにとっては死活問題であるなんだよね。だいじに食べておくれ」
イェロウ 「まじかよ」
真理 「……お、大きい街に行けば見つかるよ……きっと……」
ペンネ イェロウの今後が不安になる。
キュリオ 「ひとまず、ここから南を目指すといい。そっちに行くと少し大きい街があるからね」
入り口の扉を出てまっすぐの方向、道沿いに進めば良いと教える。
ペンネ 「南ね……わかった」
キュリオ 「それから、これは僕からの餞別」
輝くコインをポケットから取り出す。お前たちは各自5枚ずつの六ペンスコインを手に入れる。
イェロウ 「……六ペンスコイン、か」
ペンネ 「どうも」 と言って受け取ろう。
真理 「これが、救世主の証…… ……」
受け取るけど……これを巡って争いが起きてると思うと、なんだか……
キュリオ 「今すぐこのコインを賭けてこの場で殺しあっても、そうしなくてもいい。それは君たちの自由だからね」
ペンネ 「そんなことしないわよ、まったく……」 少なくとも、こんな状況ではね!
真理 「そ、そうだよ、さっきだって三人一緒だから勝てたんだから!」
イェロウ 二人をちらりと見て。「……ま、今はそうだわな。外に何があるかもわかんねえし」
キュリオ 「うん、そう言うと思ったよ」
真理 「……ねえ、キュリオ……唯一の救世主になる以外で、帰る方法ってないの?」
ちゃんと聞いておきたかったのだ。
キュリオ 「そうだね……どれも信憑性の欠片もない噂程度でしかないけれど」
それでもよければ、と肩をすくめる。
真理 「……それでもいいよ!教えて!」 掴みかかったりはしないけど、必死だよ。
キュリオ 「それじゃ、これが僕からの最後の講義になるかな。まずは、棚井戸の噂だ」
棚井戸 堕落の国の果ての壁にある、巨大な洞穴です。
最初のアリスが不思議の国へとやってくる際に通り抜けてきたと言われています。
内部は広大な縦穴を中心とした階層構造となっており、各階層に設置された階段を探せば、上へと登ることができます。
中央の縦穴は今でも不思議を保っており、ここから1階へ落ちても死ぬことはありません。
しかし、鳥のように翼を持つ生物でもこの縦穴を飛翔して移動することはできません。なぜかゆっくりと降下してしまうのです。
最上階を抜けると「元の世界」へ辿りつけるという噂が囁かれていますが、棚井戸の最上階へ辿りついた者は1人もいません。
理由はおおむね2つ。探索のための物資が尽きるためと、上へ行くほど蔓延る亡者が強力になるためです。
真理 ふむふむ……これもノートに書いておこう……
キュリオ 「もう一つは、ハートの王国の秘密。
 最初のアリスが最後に立ち寄った場所というのが、ハートの王国の王立裁判所なんだけど」
王立裁判所 ハートの王城の著名な施設の一つです。
亡者と化した傍若無人のハートの女王が、今も処刑台で罪人の首を落とし続けていると言われています。
最初のアリスが最後に立ち寄った地であるとされており、
堕落の国の秘密にまつわるアーティファクトが隠されているという噂があります。
勿論、この建物に立ち入って生きて帰ったものはいません。すべては噂に過ぎません。
キュリオ 「僕から教えられるのは、そんなところかな」
真理 「王国の裁判所……あ、確かアリス……最初のアリスが裁判の後に目覚めた所だから……」
イェロウ 「ふぅん……亡者に食われてんじゃねーのか。最初のアリスってやつもよ」
真理 「そ、そんなことないよ……!
 最初のアリスは……少なくともそのモデルだった人は、おばあさんになるまで生きてたんだから!
 だからきっと、どっちかで出られるはずだよ!ありがとうキュリオ!」
ペンネ (……"最初のアリス" か……真理は、ほかにも何か知ってそうなこと言ってたわね……) とぼんやり考えている。
キュリオ 「……君たちがどの道を選ぶとしても、無事君たちの望むゴールまで辿り付けることを祈るよ」
キュリオはまたニヤニヤ笑いだけを残して薄れていく。
「頑張って。次は……縁があったら、海岸あたりで会う事になるかもね」
GM あとには亡者犬の残骸が残っている。
ペンネ 「……あいかわらず妙な消え方するわね」 消え失せるニヤニヤ笑いに向かって。
真理 「海岸って……なんでだろ……?」 首を傾げる
イェロウ 「旅を続けてりゃわかんだろ。それよりもよ……外がどうなってるのか、見に行ってみようぜ。
 ずっと気になってたんだ。こうまでして頑なに閉ざして、一体何があるんだってな」
ペンネ 「そうね、私も気になるわ」
真理 「……う、うん。ちょっと……」
怖い気もするけど……というのは、言ってしまうと本当になりそうなので口には出せない。
ペンネ 亡者犬の首元の鍵をもぎもぎしてイェロウに渡そう。入り口の扉を開く鍵だったよね。
イェロウ ああ。受け取ろう。
イェロウ 扉に向かう道中、キッチンから食料と水を拝借しておこうか。
ペンネ わたしはクローゼットに寄って羽織り物でももらっていこう。服やぶれちゃってそうだし。
イェロウ しばらく三人でごちゃごちゃと漁った後、改めて玄関扉へ並ぶ。
GM 扉……かなり重厚な金属の扉だ。
真理 実際に見たことはないけど、シェルターってこういう扉なのかなぁって思ったり……
イェロウ 「……じゃ、開けるぞ」
真理 「うん……!」
ペンネ 念のためイェロウをカバーできる位置に立つ。
イェロウ 鍵を差し込むぞ。
GM ガチャリ。鍵の開く音が玄関に響く。
扉を押せば、それはギシギシと不快な音をたてる。
重い扉は力を込めてもなかなかスムーズには開いてくれないが、確実に、徐々に、その隙間は距離を広げ……
GM ――その淡い光の先には、果てしない荒野が広がっていた。
空は厚ぼったい雲の隙間から薄昏い色を覗かせており、地に植わる草木はほとんどが枯れきっている。
そんな、死の荒野が。お前たちの眼前に広がっている。
真理 「………………」 絶句。
イェロウ 「…………こりゃ、酷ェな」 思わず目を見開いてしまう。
「世界の終りがあるとしたら、こんな景色なんだろうな」
ペンネ 「不毛の土地、って感じね……。ほんとにこのさきに街なんてあるのかしら」
真理 「……そ、そうだ、南……道沿いに進めばいいんだったよね……」 道……ある?
GM うっすらと、それらしきレンガの赤色が確認できる。風によって運ばれてきた砂塵の下に埋もれてはいるが。
これを道と呼ぶかどうかは、堕落の国の住人たちとお前たちの感性の差かもしれない。
真理 「い、急いだほうがいいかもね……また化け物……亡者が出るかもしれないし今まさに、お前の背後の友人が亡者になるかもしれない……」
ペンネ 「そうね、どうせここに居たって明日には追い出されるみたいだし。行きましょうか」
イェロウ 「ああ、……」
三人揃って歩き出す。……ふと、胸中が大きくざわめく。
GM さて……エピローグでは、亡者化の確認をしなければならない。
対象は〈発狂〉したキャラクター、つまりイェロウ。
ランダムに能力を1つ選んで判定し、失敗すれば亡者化(ロスト)する。キャラクターシートは没収だ。
イェロウ うう、こ、ここで亡者化かよ……。まずはランダム能力決定から、いくぞ……
ランダムに決めた結果、【才覚】で判定。
真理 !!これは!!!!
ペンネ セーフのよかん!
イェロウ いける!いけるんだ!俺たちは三人でこの堕落した世界を巡るんだ!人は何故フラグを積み立てようとするのか
目標値7に対してイェロウの達成値は13。――成功!亡者化なし!
全員 よっしゃーーーーーーー!!!(歓声)
GM 楽勝でしたね。
イェロウ 死ぬかと思ったよ!!
真理 はーっ、はーっ。
イェロウ 「…………」 足を止めて、ぼーっと眺めている。この腐敗した世界を。
(大丈夫だ。俺はまだ……まともでいられる)
真理 「……どうしたの? やっぱり……不安、とか……」 イェロウが一歩遅れた所で振り向こう。
ペンネ もうちょっと先で振り返って二人を見守っている。
イェロウ 「ああ、いや、何でもねえよ。ちょっと、この景色は流石にヤベェだろって思った。そんだけ。
 殺し合いがどうとかは、まだわかんねえけど……ま、多少は救ってやるとすっか」
真理 「……うん!三人一緒なら、きっとなんとかなるよ!」
二人とも戦う気はないみたいで……まだ一緒にいられるんだ。先行きは暗いけど、ほっとした!
ペンネ 「ふふ、わき目もふらずに帰ろうとすると思っていたわ」
イェロウ 「多少はだよ、多少は!」 走って二人に追いつく。
ペンネ イェロウの言葉にくつくつと笑いながら歩みを進めてゆく。
真理 私も合わせて……ふふふっと笑おう。
イェロウ 「なんだよ、二人してその顔はよぉ……」
ペンネ (まあ、しばらくは……こういう関係が続いていくのも、悪くはない。
 それに私が唯一を目指すとしても、ふたりが帰ってからでいいはずだ)
不毛の荒野へと踏み出す、三人の少女たち。
この三人の少女たちの誰かが、腐りゆく堕落の国を救う救世主となるのか。それは分からない。
決して晴れる事のない堕落の国の空に、その昏い色には似合わぬ笑い声が響いた。
リプレイ「アリスの教練場」END