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ワイルドカード
脅威度5~7/2人用/協力傾向/ロスト救済/キャンペーン
シナリオ制作:ムクチャン
概要
これは何?
特殊な用途のショートキャンペーンです。クリアすると、報酬として死亡・亡者化その他の要因によってロストした救世主のPCを1人蘇らせることができます。残念ながら、末裔はダメです。この報酬を目的としてプレイする場合は必ず、復活させる対象のPCがロストしたセッションをマスタリングしたGMの許可と立ち合いのうえでプレイしてください。

とくにPCの復活を目的とせず、設定上の仲間を蘇らせるためのキャンペーンとして遊んでも構いません。また、GMを必要としない設計となっているため(ストーリーのネタバレを気にしないのであれば)「デッドエンド」のようにパズル的な感覚で挑むこともできます。ただし「デッドエンド」と比べても難易度は高く、生還は難しいでしょう。
まえがき
堕落の国の世界観においてロストしたPCを完全な形で蘇生する力を持つのは唯一「ワイルドカード」のみであり、その他には一切存在しません。「ワイルドカード」は、ロストPCの救済について Dead or AliCe 公式が認められる最大限の譲歩です。難易度は意図的に高くしてあります。そのぐらいの試練でなければ、デスゲームで敗退したキャラクターの復活には釣り合わないだろうという制作者の思想によるものです。

もちろん、これはあくまで公式のスタンスの明示ですので、非公式で救済手段を設定する分には皆さんの好きなようにして頂いて構いません。
シナリオ概要
概要
このシナリオは、六ペンス50枚(脅威度5)のPC2人用、協力傾向のシナリオです。
背景
亡者と化した救世主すら蘇らせると言われる聖遺物ワイルドカード。失った仲間を取り戻すためワイルドカードの伝説を追い続けてきたPCたちは、フルー・ルドリーズという救世主がワイルドカードを所持しているという情報を突き止めます。

PCたちはフルーの隠棲する愚者の神殿へと向かいますが、フルーはワイルドカードを危険視して封印しており、誰にも渡すつもりはありません。ワイルドカードを求めるのであれば、裁判によって彼女を打ち倒し、奪い取る他にありません。
使用MOD
NOFUTURE MOD
詳細はこちら。レベル1:HARDを採用します。
難易度変更MOD「救世主強化」
救世主PKを強化します。詳細は基本ルールブックをご確認ください。
お茶会MOD「ラウンド変更」(採用任意)
お茶会2ラウンドを前提としたシナリオですが、セッション時間短縮のため、お茶会1ラウンドに変更することができます。詳細は基本ルールブックをご確認ください。
裁判MOD「ひとりぼっちの英雄」
PKはカードを引きません。かわりに、状況に応じて所定の処理を行います。詳しくはPKデータのイカサマを参照してください。
進行
巻頭歌
拝啓、アリス。

きみが物言わぬ抜け殻となってから、
一体どれだけの時が流れたでしょう。

猟奇と才覚、愛によって世界が救われたとしても
もはや僕にとっては何の価値もありません。

だから。

愛しいアリス。
きみを必ず取り戻してみせる。
たとえ他のすべてを犠牲にしても。

そしてもう一度、物語を始めよう。


Dead or AliCe『ワイルドカード』

それは運命を覆す呪われた聖遺物――
プロローグ
その神殿は広大な荒野の端、人の寄り付かぬ地にひっそりと佇んでいた。中へと踏み入れば、埃っぽく湿った空気が鼻をつく。内部はところどころ崩れており廃墟そのものだが、僅かに生活の痕跡が見える。静かな空間に、自分たちの足音だけが反響する。

と。
来訪者の足音を聞きつけたのであろう。奥の間から、何者かが立ち上がる気配を感じる。やがて通路の奥の闇から現れたのは、物々しい甲冑を身に着けた騎士だった。

「……キミたちは」

声の調子から、その甲冑の中身が女性であることが分かる。

「物盗りか、それとも偶然迷い込んだのか。前者なら、見ての通りここには何もない。残念ながらね。キミたちが後者で、もし一夜の宿が欲しいというだけなら、好きにするといい」
物語はPCたちが愚者の神殿へ辿り着き、フルー・ルドリーズと出会うシーンから始まります。必要ならば、GMはその前の場面(PCたちがワイルドカードや、フルーの情報を得る場面)を描写しても構いません。それまで(つまり、これから蘇生させようとしているPCがロストするまで)の経緯がハッキリしているのであれば、馴染みの組織のNPCなどからワイルドカードの情報を渡せばそれらしく繋ぐことができるでしょう。

フルーと出会ったPCたちはワイルドカードの所在について問いただすか、それとなく探ろうとするはずです。それに対してフルーはワイルドカードの存在を隠したりはしません。PCたちがワイルドカードを求めていることが明らかになると、彼女はPCたちをワイルドカードのもとへと導きます。
「キミたちは救世主のようだ。それも、かなり力のある。いくら私が隠そうとも、キミたちはおそらく見つけてしまうだろう。だから正直に話そう。確かに、アレはここにある。
 ……ついて来て」

フルーは二人に背を向けると、通路の奥へと向かう。薄暗い通路に火を灯しながら、奥へと進む。そしてやがて一つの扉の前で立ち止まった。

「ここだ」

開かれた扉の奥には、入り口のホールより少し小さい部屋があった。その中央に祭壇が置かれており、四方に何やら祭具らしきものが置かれている。祭壇の上には一枚のカードが浮かび上がり、くるくると回転していた。
続けて、フルーはPCたちに次のような内容の説明を行います。
得られる情報
ワイルドカードは「呪われた聖遺物」である。
奇蹟の代償として末裔の心臓100、始祖の心臓1を要求する。
大勢の罪なき末裔を犠牲にする非道は二度と行われてはならない。ゆえにワイルドカードを封印し、誰の手にも渡らないよう見張っている。
フルー自身もワイルドカードによって蘇った救世主の一人である。自分は大切な何かを忘れてしまった。詳細は分からないが、それも代償の一つかもしれない。
そしてワイルドカードから手を引くようPCたちを説得します。
お茶会
フルーの話を聞いたPCたちが迷い悩んだり、別に悩まなかったり、改めて決意を固める場面です。シーン描写の際は、補遺にある「廃墟と化した神殿シーン表」を利用することができます。
PKの行動指針
横槍は行いません。手番行動では『防壁』を持っているPCの疵を優先して狙います。いなければ『妨害』持ちのPCを狙いましょう。「ティーセット」「子山羊革の手袋」は、PCからヤリイカ込みで6以上の横槍を受けた場合、2つ同時に使用しましょう。
裁判
最終的にPCたちが引かないと分かればフルーはライフルを抜き、裁判で決着をつけることになります。
「キミたちにも事情があるのは十分承知だ。だからこそ、私はすべて包み隠さず話した。それでも、というのなら……こうするしかない」

「己の根源、魂を賭けた訴え。私は私の理屈で、あのカードの封印を解かせるわけにはいかないが、キミたちの主張もまた、間違ってはいない。優劣なんてないんだ。だからこそ、私は全力で応じよう」
エピローグ
敗北
フルーはPCたちを殺害し、ワイルドカードの使用による悲劇は防がれます。
勝利
フルーが生存している場合、その生殺与奪はPCたちに委ねられます。いずれにせよ、PCたちはワイルドカードを入手します。手に取れば、それだけで封印はとけ、ワイルドカードは好き勝手に喋り始めます。ワイルドカードは軽い調子で挨拶と、外へ連れ出してくれることについての感謝を述べた後、PCたちが誰かの蘇生を望むなら代償として手始めに末裔の心臓100個を要求します。

ここで一旦物語の幕は閉じられ、第二章へと続きます。
PK "護衛騎士"フルー・ルドリーズ
キャラクターシート
キャラクターシート:”護衛騎士”フルー・ルドリーズ

聖遺物ワイルドカードを管理している救世主です。かつて自身がワイルドカードによって復活させられたという経緯を持ちます。その際に行われた非道を防ぐため、二度とワイルドカードが使用されることのないよう厳重な封印を施し、監視しています。

かつてとある王国の見習い騎士であった彼女は、敵国によって王国が攻め滅ぼされたその日、王国の姫とともに堕落の国へと招待されました。フルーを復活させたのは、その姫です。ただし、フルーは姫のことを覚えていません。ただ、とても大切なものを失ったという喪失感だけが心の疵として彼女の内にあります。これはワイルドカードが復活の代償として姫の『存在そのもの』を奪ったためで、ワイルドカードだけが知る事実です。

フルーを蘇生した『誰か』のことを誰も覚えていないことから、フルーはその『誰か』こそが自分の失ったものに他ならないと推測しています。命以外のすべてを失ったに等しいほどの大きな喪失感を抱える彼女にとって、もはや現世は何の意味も持たない空虚にすぎませんが、多くの犠牲、何よりも大切な『誰か』と引き換えに救われた自分の命を絶つことはできませんでした。

そして、彼女はワイルドカードを封印するために残りの人生を捧げることにしました。それこそが、自分の生かされた意味なのだと己に言い聞かせながら。
心の疵
抉られる場合、以下の記述を参考にしてください。
喪失感
「ねえ。キミは……私に何を望んでいたの?」
先の項目で述べた通り、フルーは自身のすべてを失ったにも等しいほどの激しい喪失感を抱えながら、失ったものが何であるかのすら分からないということへの無力感と罪悪感に苛まれつづけています。
冷たき死の感触
「ふと、抗い難い誘惑にかられる時がある。キミたちも一度味わえば分かるさ」
苦痛に満ちた生を歩む者にとって、死が与える永遠の安息は甘美な囁きです。フルーは実際にそれを一度経験しているため、よりその誘惑に屈しやすくなっています。
補遺
その他の情報を記しておきます。ロールプレイの参考にしたり、適当に改変して使ってください。
ワイルドカード
「イイイイイヤッホゥゥ! 自由! 自由だ!」
「起こしてくれたのはキミ? それともキミ? サンキュー! イェー、サンキュー!」
「ボクはワイルドカード。予測不能にして万能の切り札!」
知性をもち、会話も可能な一枚のトランプカード(絵柄はJoker)です。堕落の国で唯一、救世主を復活させる奇跡の力を秘めていますが、その代償として、末裔の心臓100個と始祖の心臓1個、更に最後に特別な何かを要求すると言われています。犠牲となる末裔および始祖はワイルドカード自身が都度指定し、その場所へと持ち主を導きます。

神殿で封印されている間は退屈だったようで、フルーへの恨み言を漏らします。おしゃべりが好きで、聞かれたことや聞かれていないことについて、楽しげに話します(GMは適当に好きなタイプの口調や人格を設定して構いません)。しかし、最後に求める代償についてだけは聞かれても、「始祖の心臓が手に入る前に知ったって、とらぬ狸のなんとやらでしょ」などと言ってはぐらかします(最後の最後で明かすことを楽しんでいる節はありますが、悪意はありません)。
ワイルドカードが最後に求める特別な代償は、蘇らせる救世主が最も大切に思っている者の『存在そのもの』です。それをワイルドカードに奪われた対象は、最初からどこにも存在しなかったことになり、あらゆる世界の人々の記憶からも消滅します。ただし、対象に強い想いを抱いているほど「大切な何かを忘れてしまった」という強烈な喪失感を抱えることになります。また、対象が過去に為した行いは失われません。矛盾の無い範囲で『誰か』が成し遂げたという事実だけが残ります。このことはフルーの事例から垣間見ることができますが、実際にワイルドカード自身の口から語られるのは第二章のエピローグとなります。

ワイルドカードの破壊は可能ですが、本気で破壊しようとすれば防衛機構が発動するため実質不可能であるとワイルドカード自身が教えてくれます。それでもPCが破壊しようとした場合、即座に全滅する可能性があると警告しましょう。この警告も無視された場合は、おもむろに異章のデータを使って裁判をはじめ、PCを全滅させてください。
廃墟と化した神殿シーン表
1D12 廃墟と化した神殿シーン表
1崩れた玄関。石畳はひび割れ、腐った木材が散らばり、壁には枯れた蔦が張り巡らされている。
2礼拝堂。首のない女神像。壁には穴があいており、天井には大きな亀裂が入っている。
3ひどく傷んだステンドグラスの窓。光はかすんでいて、破片が地面に散らばっている。
4破壊された祭壇。大理石はひび割れ、上にはほこりが積もっている。
5椅子が置かれた埃っぽい側廊。荒れ果てた天井から、砂粒が落ちてくる。
6石造りの柱がある回廊。ひび割れた壁に絡みついた蔦は、すでに枯れている。
7天井からぶら下がった大きな鐘。錆びついた金属が剥がれており、風で揺れている。
8古い木製のドア。傷んで膨らんでおり、内側から釘が打たれている。
9天井に穴の開いた暗い地下室。小石や砂利が散らばっており、カビ臭い匂いが漂う。
10霧のかかった墓地。石碑には腐った苔が生え、墓穴の中にはドロドロとした何かがある。
11亡者鳩が巣を作っている塔の上のベランダ。ところどころ床板が欠落しており、危険だ。
12古い鐘楼。石造りで、風化が進んでいる。屋根の一部が崩れ、中から何かの鳴き声が聞こえる。
シナリオ概要
概要
このシナリオは、六ペンス60枚(脅威度6)のPC2人用、協力傾向のシナリオです。第一章を終えた時点でPCの六ペンスは55のはずですが、60になるよう追加で六ペンスを与えてください。

第一章と第二章を繋ぐ幕間として、代償のために100人の末裔を殺戮するシナリオを用意するというのも良い考えです。その場合、正義感の強い救世主がPKとして襲い掛かってくる展開にすると良いでしょう。
背景
ワイルドカードの指示に従って末裔の心臓100個を集めたPCたちは、次に、始祖『ハートの王』と対峙することになります。また、無事にハートの王を打ち倒しその心臓をワイルドカードに捧げることができたとしても、まだ最後の代償が残っています。その真相が明らかになったとき、PCたちは最後の選択を行うことになります。
使用MOD
NOFUTURE MOD
詳細はこちら。レベル2:HELLを採用します。
難易度変更MOD「亡者強化」
亡者PKを強化します。詳細は基本ルールブックをご確認ください。
大型お茶会MOD「惑乱迷宮」
お茶会でダンジョン探索を行います。⇒惑乱迷宮GMパート
末裔のPCは迷宮専用の血統の恩恵を取得しても構いません。
お茶会MOD「クエスト」
「惑乱迷宮」を使用する上で必要となるMODです。詳細は基本ルールブックをご確認ください。
お茶会MOD「ラウンド変更」(採用任意)
お茶会2ラウンドを前提としたシナリオですが、セッション時間短縮のため、お茶会1ラウンドに変更することができます。詳細は基本ルールブックをご確認ください。
裁判MOD「ハート王国式裁判」
PKはカードを引きません。かわりに、状況に応じて所定の処理を行います。詳しくはPKデータのイカサマを参照してください。
再構築MOD「ワイルドカードの助言」
PKのデータが公開された時点でPCのデッキおよび宝物の再構築を行います。
シナリオをはじめるまえに
このシナリオでは、PKのデータが公開された時点でPCのデッキおよび宝物の再構築を行います。通常はお茶会でPKデータを公開することになっていますが、プレイ時間短縮のため、プロローグの前からPKデータを公開しておいても構いません。

また、お茶会ではMOD「惑乱迷宮」を使用します。図の通りにトランプのカードを並べ、裏向きにしておいてください。各カードがどのようなクエストを持つかは、GMパートを参照してください。

お茶会1ラウンドの場合は、2×2の小さな迷宮になります。
1列目
♠6 雑魚-パピー級-
2列目
♥7 3273.15K
♦4 女王の断頭台
♦7 腐敗の大気と大地の膿
3列目
♥A 尊厳破壊
♠7 雑魚-パピー級-
進行
プロローグ
大廊下。
その一画に隠された豪奢な扉を開けば、その先には眩いばかりの色とりどりの花壇、冷たく澄んだ水を湛えた噴水に、赤いバラの花をつけた巨大な樹。同じ堕落の国とは思えぬ光景が広がっていた。

ここから先は、かつて広大な版図を誇ったハートの王国に残された唯一の領土であり王都。その入り口にあたるのが、この庭園である。

お前たちがこの地に足を踏み入れた目的はただ一つ。
100人の末裔の心臓の次に、ワイルドカードが求めた供物。すなわち、王城に棲む始祖『ハートの王』の心臓の入手だ。
PCたちがハートの王の心臓を狙い、王家の庭園へと足を踏み入れる場面からスタートします。GMはワイルドカードを演じ、意気込みなどをPCたちにインタビューしてみると良いでしょう。シナリオとして提供する情報は特にないため、そのまま即座にお茶会に入っても構いません。

必要であれば、これ以前の、無辜の末裔たちを殺戮し心臓を集める場面を描写しても良いでしょう。このキャンペーンを始める前に別のキャンペーンを遊んでいたPCならば、これまで助けたり、協力関係にあったNPCの末裔を殺害させると、より背徳感や罪悪感を与えられるかもしれません。

ワイルドカードを演じる場合は、適当に茶々を入れたり、PCたちを次の目標(ハートの王)へと導く誘導役として使いましょう。
お茶会
この時点までのどこかのタイミングでPKのデータを公開します。その後、PCはデッキおよび宝物の再構築ができます。ハートの王は、プロローグで描写されているとおり王城の中にいます。PCたちは王家の庭園からハートの王城へと向かうことになり、お茶会ではその道中を描きます。

このシナリオのお茶会では、惑乱迷宮を使用します。通常のお茶会との違いについてはこちらを参照してください。

シーン描写の際は、補遺にあるシーン表を利用することができます。お茶会の前半は「王家の庭園シーン表」、後半は「ハートの王城シーン表」を使用すると良いでしょう。
PKの行動指針
横槍は毎回入れておきます。HP消費や判定値の関係上、配下の「♣首切り役人」に横槍させると良いでしょう。惑乱迷宮を使用するため、PKの手番行動はありません。
裁判
お茶会が終わるとPCたちは玉座の間に辿り着き、いよいよハートの王と対峙することになります。
両開きの扉を開けば、そこはけばけばしい色合いの、あまり趣味の良くない感じの大部屋だった。

部屋の奥。玉座の上。顔色が悪く、高貴な雰囲気を感じさせる風体の小柄な男が、その無機質な、黒と赤の瞳を入口の救世主に向ける。
おそらく、これがハートの王の成れの果てなのであろう。

「………オオ、オァ……」

彼は年代を感じさせる、しかし豪奢な長いローブを引きずりながら緩慢な動きで腕を上げた。その指先は救世主たちを差し……次の瞬間、王の4倍か5倍はあろう巨躯が玉座の後方より飛び出し、お前たちの眼前に着地する。

「グオオオオオオオオオオオオ!!!」

♣Aの図柄を背負った兵士の亡者がハルバードを構え、威嚇の雄たけびをあげた。
エピローグ
敗北
PCたちは死亡し、その血で庭園のバラを赤く染めることになります。ワイルドカードは二言三言コメントを残し、風に吹かれてどこかへ消え去ります。
勝利
無事、ハートの王の心臓を入手します。心臓をワイルドカードに捧げれば、ワイルドカードは最後の代償を要求します。最後の代償について、ワイルドカードから次の事実の説明があります。
得られる情報
最後に求める代償は、蘇らせる救世主が最も大切に思っている者の『存在そのもの』。
それを奪われた対象は、最初からどこにも存在しなかったことになり、あらゆる世界の人々の記憶からも消滅する。
対象に強い想いを抱いているほど「大切な何かを忘れてしまった」という強烈な喪失感を抱えることになる。
対象が過去に為した行いは失われない。矛盾の無い範囲で『誰か』が成し遂げたという事実だけが残る。
もしPCから聞かれれば、フルー復活の事例(第一章を参照)についての説明も行う。
最後の代償が何になるかは復活するPCの主であるプレイヤーとGMが相談して決定します。PCに対して課す最後の代償が決定したら、ワイルドカードはPCに対してその内容を通知し、三つの選択を迫ります。選択肢と選択の結果は次の通りになります。
1.代償を捧げる
代償を捧げ、対象のPCを蘇生します。ワイルドカードに捧げられた代償は完全に消失し、すべての人々から忘れ去られます。以後、蘇生したPCは心の疵の一つに「喪失感」(フルーと同様のもの)を設定します。
2.諦める
蘇生を諦めます。ワイルドカードを手放した場合、ワイルドカードは風に吹かれてどこかへ消え去ります。愚者の神殿にワイルドカードを安置することもできます。
3.破壊する
ワイルドカードとの裁判を行います。この選択肢については、PCたちが「他に手段はないのか」とワイルドカードに聞けば、またはPCたちがあまりにも迷っているようなら、「別の方法もないことはないけど……」と言葉尻を濁しながら説明してくれます。

長々と説明することもできますが、要点だけ纏めれば「ワイルドカードを破壊すれば代償なしに蘇生させられる」「ワイルドカードを破壊しようとするものは、ワイルドカードを守ろうとする世界の意思(超強い)に攻撃される」となります。PCたちにとってはそれさえ分かれば充分でしょう。もっと詳しく聞きたいという希望があれば、補遺の項にある「ワイルドカードの知る世界の真相」を参考にしてみてください。

この選択を行った場合、一旦物語の幕は閉じられ、異章へと続きます。
PK 始祖『ハートの王』
キャラクターシート
キャラクターシート:始祖『ハートの王』

始祖にして、PCたちから心臓を狙われる哀れな存在です。
心の疵
抉られる場合、以下の記述を参考にしてください。
恐妻家
「尻に敷かれ続けてウン百年らしいよ。これも愛の形ってやつ? ボクはゴメンだね」
妻が大事にしている庭のバラが荒らされたり、タルトが盗まれたりすることを恐れています。何かしらそういうイタズラをしてあげれば抉れるでしょう。ハートの女王の声マネ(首を切っておしまい!!)などと言ってみるのも良いかもしれません。
"トランプのくせに"
「あ、ちょ! やめて! その技はボクにも効く!」
堕落の国に伝わっている有名な呪文なのですが、こんな呪文が効くとは誰も信じていません。つまり信ずるものは救われる、ということです。心の底から信じることができれば、その度合いによって、相手は動きが鈍くなったり止まったりトランプに戻ったりします。まあ、それが難しいのですが。
補遺
その他の情報を記しておきます。ロールの参考にしたり、適当に改変して使ってください。
ワイルドカードの知る世界の真相
ワイルドカードは「堕落の国の意思が生んだ世界の仕組み」の一つです。それは「六ペンスコイン」や「30日ルール」と同じレベルの概念とみなすことができます。絶大な奇跡の力を持ってはいますが、あくまでそれは世界を成り立たせるためのものであり、救世主が自在に利用できる代物ではありません。

しかし(可能性は限りなく0に近いものの)ワイルドカードを破壊することができれば、救世主はその奇跡の力を横取りして都合よく改変することができます。それによって、たった一度だけですが、代償なしに蘇生の奇跡を行使できます。ただし、世界の仕組みの一つであるワイルドカードを破壊することは、すなわち世界に対する反逆です。「堕落の国の意思」はこれを見逃そうとしません。より正確には、そのような反逆者を世界から爪弾くための「防衛機構」がワイルドカードに組み込まれていて、自動的に発動します。それはおそらくPCたちを完膚なきまでに叩きのめすでしょう。
堕落の国の意思
それが何者であるかについて問われても、ワイルドカードは知らないと答えます。ただ、「六ペンスコイン」や「30日ルール」、「ワイルドカード」などの仕組みは明らかにインテリジェント・デザイン的であることから、ワイルドカードは超自然の上位存在すなわち神のようなものが存在している、または少なくとも過去に存在していたと推測しており、その概念のことを「堕落の国の意思」と称しています。
シーン表
1D6 王家の庭園シーン表
1薔薇の庭。亡者と成り果てたトランプの庭師が徘徊し、バラを血の色に塗り潰している。女王からの処刑宣告を免れる為に。
2迷宮の庭。複雑に入り組んだ迷路が広がる。高い壁に囲まれた中には、花や植物が生い茂り、迷い込んだ人々を魅了する。
3草花の丘。広大な芝生の上に、大小様々な草花が咲き誇る。亡者さえいなければ、リラックスして過ごせる場所だろう。
4青々とした芝生に囲まれたハート型の池。中央には美しい噴水があり、周囲に可愛らしい椅子が置かれている。
5ティーガーデン。可愛らしいテーブルの上には、まだ湯気のたつティーセットが置かれている。誰が用意したのだろう。
6ジグザグ道路。迷路のように曲がりくねった小道。薔薇や草花が生い茂り、蝶や虫の亡者が飛び交う。
1D12 ハートの王城シーン表
1入り口。壮大な門があり、城内に入る際には重い扉を開ける必要がある。
2大広間。広く、高い天井にはシャンデリアが吊るされている。中央には長いテーブルや椅子が並んでいる。
3兵士の会議場。兵士たちが会議を行う場所で、中央には円卓が置かれている。壁には剣や槍、鎧が掛けられている。
4トランプの部屋。壁にはトランプのマークが描かれており、床にも同様の模様が敷き詰められている。
5宝物庫。金銀財宝や芸術品、聖遺物などが保管されており、大きな扉で厳重に守られている。
6女王の寝室。赤いシルクのベッドが置かれており、部屋全体が赤い色調で統一されている。
7動物園。過去には珍しい動物たちが飼われており、飼育員が世話をしていた。今は亡者の巣窟だ。
8ティールーム。テーブルにはフルーツやお菓子が並べられ、紅茶が入ったカップが置かれている。部屋中には甘い香りが漂う。
9ハートの部屋。部屋全体がハートの形をしており、部屋の中央には大きなハート型のテーブルが置かれている。
10王の寝室。壮大な寝室で、大きなベッドがあり、豪華な装飾品が飾られている。窓からは城下とその向こうに広がる景色が見える。
11祭壇の間。王や貴族たちが祈りを捧げるための場所。祭壇が設けられており、その周りには荘厳な壁画がある。
12鏡の間。壁一面に大きな鏡が貼り付けられており、鏡の向こう側には不思議な世界が広がっているように見える。
セッション用素材
以下の画像は、本シナリオのプレイ及びリプレイ作品(Dead or Aliceのプレイ風景を再現する読み物や動画作品など)にのみ利用することができます。

惑乱迷宮:3人用
惑乱迷宮:2人用
シナリオ概要
概要
このシナリオは、六ペンス70枚(脅威度7)のPC2人用、協力傾向のシナリオです。第二章を終えた時点でPCの六ペンスは65のはずですが、70になるよう追加で六ペンスを与えてください。
背景
PCたちは代償なしに蘇生の奇跡を行使するため、ワイルドカードの破壊に挑戦します。
使用MOD
NOFUTURE MOD
詳細はこちら。レベル3:NOFUTUREを採用します。
難易度変更MOD「救世主強化」
救世主PKを強化します。詳細は基本ルールブックをご確認ください。
お茶会MOD「まだ何も飲んでないわ」
お茶会はありません。
裁判MOD「WILDCARD」
PKはカードを引きません。かわりに、状況に応じて所定の処理を行います。詳しくはPKデータのイカサマを参照してください。
裁判MOD「Joker:ザ・フール」
詳しくはPKデータのイカサマを参照してください。
再構築MOD「ワイルドカードの助言」
PKのデータが公開された時点でPCのデッキおよび宝物の再構築を行います。
シナリオをはじめるまえに
このシナリオでは、PKのデータが公開された時点でPCのデッキおよび宝物の再構築を行います。通常はお茶会でPKデータを公開することになっていますが、プレイ時間短縮のため、プロローグの前からPKデータを公開しておいても構いません。
進行
プロローグ
第二章からの続きです。まずはPCたちがワイルドカードに何らかの攻撃を仕掛けるよう、ワイルドカードの説明によって誘導してください。ワイルドカードのほうから先に攻撃を仕掛けることは決してありません。
救世主の一撃を受け、ワイルドカードに亀裂が走る。だが、その亀裂はカードを裂くにとどまらず、背後の空間にまで広がっていく。やがて亀裂は大地と空をことごとく埋め尽くし……

「ま、せいぜい頑張りなよ」

ワイルドカードの言葉とともに、世界は硝子のような音を立てて砕け散った。
その後、PCたちはいわゆる亜空間に放り出されます。基本ルールブックの不思議空間シーン表などを参考に、自由にボス戦らしい空間を演出してみてください。

お茶会はありません。即座に裁判に突入します。ただし、PCはそれぞれお茶会の手番行動に1回ずつ成功したものとして、その成果を得ることができます。
どこからか、ワイルドカードの声が響く。

「救世主の蘇生に使うはずだった、この世界の礎100と不思議の源1。それらは今ここで払い戻してあげよう。アレに抗うための力としては、雀の涙に過ぎないだろうけれど。これまで頑張った分、せめてもの足しにするといい」
この時点までのどこかのタイミングでPKのデータを公開します。その後、PCはデッキおよび宝物の再構築ができます。
裁判
それは世界に定められた恩恵である。
それは世界に定められた絶望である。
それは世界に定められた秩序である。

猟奇、才覚、愛をもってしても
それに逆らうことは許されない。

――世界の理に弓引くことの愚かさを、その身をもって知れ。
エピローグ
敗北
PCたちはすべての存在を食いつくされ、どこにも存在しなかったことになります。ワイルドカードは二言三言コメントを残し、風に吹かれてどこかへ消え去ります。
勝利
ワイルドカードは破壊されます。特にシナリオとして辞世の句は設定されていませんが、多少なりとも共に時間を過ごしたPCたちに一言二言残していくのも良いでしょう。

同時に、PCはその奇跡の力を横取りして都合よく改変することができます。それにより、たった一度だけ、代償なしに蘇生の奇跡を行使することができます。
PK ワイルドカード
キャラクターシート
キャラクターシート:ワイルドカード

世界の仕組みを守護する防衛機構が起動した状態のワイルドカードです。身の程知らずの救世主がこれに挑んでしまった場合、残念ながら勝ち目はまずないでしょう。
心の疵
お茶会はありませんが、何かしらの演出をする場合の参考になるかもしれないので置いておきます。
脆弱性1
「ボクがちょっとだけ手伝ってあげる。ほら頑張れ♥頑張れ♥」
かいつまんで言うと、ワイルドカードがPCたちに入れ込んでしまい、味方したくなってしまうという疵です。ワイルドカードのおしゃべり機能はもともと奇跡を行使するための複雑な儀式手順(代償の詳細について)を使用者に対して円滑に伝えるための手段なのですが、その実現のために与えられたかりそめの人格が、使用者に対してフレンドリーになりすぎてしまうというバグのようなものです。
脆弱性2
「確変確変!!今が大量放出のチャンスだよ!」
簡単に言うと、経年劣化です。世界そのものが腐りかけているので、防衛機構にもガタが来ており、本来の性能を発揮できない場面があるかもしれません。
あとがき
 実験的に、PKがカードを引かず固定のルーチンで戦うMODを導入しています。ねらいとしては、誰がGMをやっても安定した難易度となるよう処理を簡易化することにありますが、いつもの裁判にマンネリしてきた人にもオススメです。一応、実際にカードを引いて戦う場合の難易度を前提としてルーチンを組んでいますが、割り切って好き勝手やってる部分もあります。
 異章に挑むのは正直オススメできません。かなり酷いチートをしているので、余程の幸運が重ならないと勝てないんじゃないでしょうか。ストーリー的にも第二章で終わっておくほうが綺麗なパターンもあると思いますし、全滅してそれまでの努力を無に帰すより、素直に諦めて代償を捧げたほうがいいと思います。