進行
拝啓、アリス。
愛しいアリス。
この国がもうだめであるのなら、
どうしてお前はここにいる?
こんな絶望しかない世界で、お前が生きる意味は何だ?
プロローグ1 - 公爵家からの依頼
鬱蒼と茂る森。
その木を切り拓いて作られた、中規模の拠点にあなたがたはいる。
辺りを埋め尽くさんばかりに並ぶのは、箱に詰められた物資と、布でくるまれた三月兎。
ドードーの末裔が紙の資料を見比べて、公爵家エージェントと話す。
雇われのグリフォンの末裔たちがそれらの周辺で、飛び立つ支度を整えていた。
しばらくして、そのうちの一人、リーダー格の公爵家エージェントが近付いてきて、あなたがたに声をかける。
「救世主様方。こちら、いつでも出発できます」
「改めまして、この度は依頼を受けていただき、本当に感謝しております」
「なにせ、この状況で頼れるのはあなたがた以外にいませんから……」
PCたちが公爵家からの依頼を受け、目的地「黒の森」に近い、森の近くの公爵家が管理している村に拠点を構えたところからシナリオが始まります。そこから目的地へ出発することになります。
回想シーンで、公爵家のエージェントがPCたちを探しに来るところを描写してもよいでしょう。PCたちの脅威度は5であるので、公爵家にその存在が知られているくらいには有名です。また、頼られるだけの人望があります。PCたちの有名さや強さを存分に演出していきましょう。
依頼を受ける場所はどこでもよく(たとえ遠方でも、公爵家はPCたちを頼るしかないでしょう)森の拠点まで移動し、そこで支度を整えてから「黒の森」に向かいます。
公爵家は拠点からPC達に支援を行います。通常の依頼では見ないレベルの潤沢な物資があります。それほどまでに大きな依頼です。他を切り詰めたり、また犠牲者を出したりするだけの価値がこの依頼にはあるということでしょう。(クエストも参照のこと。ここでクエストを公開してもよいでしょう)
また、拠点で聞き込みをしても「スティブナイト」の情報はほとんど得られません。以下のことくらいはわかりますが、おおよそが謎に包まれており、行ってみないと分からないことが多いです。
得られる情報
黒の森は暗く、あらゆる草木が枯れ果て、黒い結晶がそこかしこに生えている場所である。そこまで広くはなく、端から端まで歩くのには長くても半日程度だろう。
広くはないし迷わないはずなのだが、なぜか帰ってこれた者がほとんどいない。
たまに何かに吸い寄せられるようにして森に入っていく者がおり、近くにあった集落が壊滅した。
黒の森に入った場合、末裔はまず帰ってこない、たまに帰ってきた救世主は発狂していたり、そのまま自殺や失踪をしたり、ほぼ無反応の無気力状態、植物状態になったりする。
帰ってきた者には「黒結晶」と呼ばれる結晶が肉体から生えていたり、体の一部が結晶に置き換わっていたりする。
公爵家はこの現象を発生させている救世主をコードネーム「スティブナイト(stibnite)」と名付けたが、本当の名前も素性もわからない。いくつか目撃情報があるが、証言が食い違っている。
よくわからないが、放っておくと村一帯を滅ぼしかねない。危険な存在である。
過去にも何度か救世主に依頼を頼んだが、今まで全滅している。
以上のことから、周辺ではこの森は「絶望の森」と呼ばれており、怖がられている。
プロローグ2 - 絶望の森
そこは色を失った空間だった。
辺りに響くのは、お前たちが踏み出した足が地面の結晶を割る音だけ。
風も吹かず葉擦れの音ひとつしない不自然に静かな森に、その音が響いては、木々の隙間に吸い込まれて消えていく。
黒く枯れた木には半透明の黒い結晶が生えており、手をつけば触れたところを傷付けるだろう。
ここにはお前たちを加害するものしかない。
精神も、肉体も、蝕んでいく。
ゆっくりと、確実に。
PCたちが森に到着します。事前の情報通り、森は暗く、黒い結晶で覆われています。草木は黒く枯れていて、風もなく、生き物の気配はしません。死、停滞、虚無の気配に満ちています。この森でPCたちはこの森の調査と救世主の討伐を始めることになります。
以下のシーン表、クエスト1~4(5はまだ公開しない)、PKの心の疵を公開し、お茶会フェイズに入ります。
絶望の森シーン表
黒の森シーン表 1D6 / 絶望シーン表 1D6
2D6で同時に1つずつ振ってもいいし、どちらか片方だけ振ってもよい。
1D6 |
黒の森シーン表 |
1 |
道なき道。かつては整備されていたであろう場所は結晶に覆われ、まともに歩くことすら難しい。 |
2 |
川。尖った結晶が流れていく。足を踏み入れたら、いくつも傷が付いて毒を浴びるだろう。 |
3 |
小屋。黒結晶に覆われていて、その重さで半分倒壊している。 |
4 |
薮。木々は黒く枯れ、かつて葉があったところには代わりに鉱石が生えている。 |
5 |
開けた場所。巨大な黒結晶のクラスターがある。長い時間をかけて大きくなったようだ。この辺りが救世主の居住地だろうか? |
6 |
黒結晶が舞っている。避けないならば、ぶつかってあなたを傷付けようとしてくる。 |
1D6 |
絶望シーン表 |
1 |
黒結晶に覆われた死体を見つける。死体は干からび、表情は絶望に満ちている。見ていると絶望的な気持ちになりそうだ。 |
2 |
薄暗く冷えた森を歩く。どれほど歩いても黒い光景が続いている。それは不安を煽り、陰鬱な気持ちになる。 |
3 |
森だというのに、風の音もなければ、風で葉が擦れる音すらしない。ここはひどく静かで、不自然で、不気味だ。 |
4 |
木々が重なったか、夜が来たか、辺りが暗闇になる。あなたに孤独感が襲いかかる。隣に誰かいるだろうか? |
5 |
道に迷う。木々の向こうに人影が見える。あなたを見ているそれは幻? 本物? 一体誰? |
6 |
気付けば、あなたの周囲には誰もいない。いつの間にかはぐれたか、それとも救世主が見せる幻覚だろうか? |
クエスト
クエストNo.5のみ、ラウンド2の開始時、もしくはPCが〈絶望〉したときに公開すること。
クエストNo.1 情報収集 |
概要 |
森を探索し、スティブナイトの情報を集める。行方不明になった人々の情報などを公爵家が提供し、情報収集を支援する。 |
目標値 |
7 |
消滅条件 |
成功するか、お茶会終了時に消滅。 |
成功 |
PKのデッキを即座に公開する。また、このクエストに成功したPCは、裁判開始から3ラウンドの間、手札の最大所持枚数が1枚増える。 |
失敗 |
特になし。 |
放置 |
公爵家はあなたがたが何かしら情報を得て帰還することを心待ちにしているが、なによりもあなたがたの命が大事だ。達成できなかったところで、気にする必要はない。あなたがたが無事でさえあるのなら。 |
クエストNo.2 物資支援 |
概要 |
公爵家から物資が投下される。 |
目標値 |
7 |
消滅条件 |
お茶会終了と同時に消滅。 |
成功 |
このクエストに成功したPCは、価値15までの宝物(凶器・衣装・小道具)、もしくは聖遺物を1つ入手する。この際、脅威度の条件は無視してもよい。聖遺物は調達での入手も含め、各陣営1つまでを上限とする。 |
失敗 |
特になし。 |
放置 |
余った資源は他の依頼に回される。それで助かる命があるかもしれない。ここで支援を断り、その結果あなたがたがこの依頼を達成できずに全滅すれば本末転倒であるが。 |
特記事項 |
このクエストはPC全体でラウンド1に1回、ラウンド2に2回行える。 |
クエストNo.3 戦術補助 |
概要 |
公爵家の膨大な資料から、最適な戦い方を割り出す。 |
目標値 |
7 |
消滅条件 |
お茶会終了時に消滅。 |
成功 |
PC全員は、お茶会中の好きなタイミングで、技能を一つ入れ替えることができる。技能変更をするタイミングが2ラウンド目である場合、「条件:脅威度6」までの技能、もしくは「遺失物技能」を習得することが可能である(能力値の条件は満たすこと)。 |
失敗 |
特になし。 |
放置 |
資料を運ぶトランスポーターのグリフォンの末裔が精神汚染される確率が下がるかもしれない。そんなことを気にしている余裕があなたがたにあるかはさておき。 |
特記事項 |
このクエストはPC全体で1ラウンドに1回のみ行える。 |
クエストNo.4 三月兎爆弾投下 |
概要 |
公爵家が飼っている三月兎の末裔の集団を投下し、麦藁の冠により森を破壊する。三月兎はその後発狂し、死亡する。 |
目標値 |
7 |
消滅条件 |
成功するか、お茶会終了時に消滅。 |
成功 |
PKのHPを1にする。 |
失敗 |
PC・PKのHPを1D6点減少する。 |
放置 |
三月兎の命が守られる。あなたがたは三月兎に感謝されるかもしれない。あるいは、何も考えていない三月兎もいるだろうが。 |
クエストNo.5 蜘蛛の糸 |
概要 |
自分を犠牲にして隙を作り、この森から仲間を逃がす。 |
目標値 |
9 |
消滅条件 |
成功するか、お茶会終了時に消滅。 |
成功 |
裁判中、自分の手番の補助動作より前のタイミングで使用できる。自身のHPを1D6点減少させ、また、1Rの間自身は技能を使用できなくなる。その後、同じ陣営のPCを1人選び、裁判から離脱させることができる。 |
失敗 |
特になし。 |
放置 |
当然、こんな行いはしない方がいい。あなた自身にも大きな隙ができるし、絶望した仲間を救うことはほぼ不可能になる。また、味方の協力なくして裁判に臨めば、あなたやあなたがたに待ち受けているのは死か、それよりも悲惨な末路だろう。まだ理性が残っているのなら、わかるはずだ。 |
特記事項 |
このクエストを組み合わせて「同じ陣営のPCの疵を抉る」判定を行う場合、その判定には抉られる対象となったPCも横槍を入れられる。 |
お茶会
PCの絶望感を煽るシナリオです。嫌な風景描写などをして、どんどん煽っていきましょう。
大事な人の幻覚を見せたり、嫌な幻聴を聴かせたり、過去の辛い記憶を呼び起こしたり、PKを動かしてPCを詰めたりするといいと思います。
PKの行動指針
1ラウンド目はまずPCに1手番行動させて2手番目のPCを抉るか、2手番行動させて3手番目のPCを抉り、〈絶望侵蝕〉状態にして、〈絶望侵蝕〉状態となったPCに他PCを抉らせます。その後●がついたPCを抉ることによって〈絶望〉にさせることができます。
ティーセットと子山羊皮の手袋は1ラウンド目に2回使いましょう。1ラウンド目が大事なシナリオです。アリスのエプロンはお茶会中にも使用できます。PKの判定が失敗したら、アリスのエプロンとうさぎのお守りを使用しましょう。
2ラウンド目を行う場合は、まだ抉っていないPCを抉ってまんべんなく〈絶望侵蝕〉させましょう。たぶんこのシナリオに来たみなさんは絶望したいと思っているでしょうし。(そうじゃないならこんなシナリオやらないほうがいいです)
PCの〈絶望〉や、横槍で配下のHPを減らす場合、『防壁』を持つ「黒結晶」のHPから優先的に減らすと良いでしょう。
クエストNo.4について
公爵家に飼われている三月兎の末裔の集団を布に包んで、グリフォンの末裔が森の上から投下します。
この三月兎の末裔には人権がなく、麦藁の冠を撃つだけの存在です。撃った後は発狂し、死亡したり亡者化したりします。
三月兎の末裔はPC、PKを見境なく襲いかかってきます。クエストに失敗した場合、PC達が三月兎の攻撃をうまく避けられなかったものとして描写するとよいでしょう。
クエストNo.5について
PCが〈絶望〉したとき、もしくは2ラウンド目を行うことを決定した場合、2ラウンド目の開始時にクエストNo.5を公開してください。
お茶会中にできるPC有利のクエストを一つ放棄しないといけない上、同陣営のPCを一人減らすことになります。裁判でPKに勝利できる可能性を限りなく下げるクエストです。また、〈絶望〉したPCを救うことはできません。仲間と自分を犠牲にして、もう一人を逃がす選択肢です。
正気ではないクエストです。逃される対象になりそうなPCは、このクエストの判定に横槍を入れてもいいでしょう。逃したい本人を抉ることで横槍を回避するのを防ぐための特記事項です。PCから横槍が入った場合、PKは横槍をせず見守りましょう。
あるいは、このクエストでは自分を対象に取って、戦闘から離脱することもできます。何もかもを捨てて自分だけ逃げ出すという選択肢があります。プレイヤーが気付いていない場合は教えてあげるとよいでしょう。
裁判
お茶会中にPCが〈絶望〉したかどうかで裁判の流れが大きく変わります。
PCが〈絶望〉している場合
裁判がPvPになります。陣営の確認を忘れずに行ってください。〈絶望〉したPCは陣営が独立します。〈絶望〉したPCが2人以上いる場合はバトルロイヤルになります。全員が〈絶望〉していても裁判は行われます。
1つを除く陣営全員が〈昏倒〉した、〈死亡〉した、降伏を認めた場合、その次ラウンドからPK「スティブナイト」が裁判に参加します。3人揃っていないとまず勝てないデータです。全滅させましょう。
もし最後に残ったPCが「PKを倒さずに周辺の村を破壊したい」などの意思を持ち、PKと戦うつもりがない場合は、裁判を省略してエピローグに移行することができます。
PCが誰も〈絶望〉していない場合
裁判はPvEになります。PK「スティブナイト」との戦闘です。
遺失技能『回想』について
裁判中に『回想』が使用され、〈絶望〉状態になった場合、即座に陣営が独立します。
裁判が長引きそうな場合
もしPvPの裁判が長引きそうな場合、PC全員に『逆鱗』を付与するなどの措置をとっても構いません。『逆鱗』を付与する場合は、PvEになったタイミングで元に戻すのが望ましいでしょう。
PKの行動指針
裁判突入時に「黒結晶」が生き残っている場合、最優先すべき行動はそれらの処分です。このPKはイカサマに『肉壁』も『陣形』も持たないため、『砕身』『鏖殺』『特攻』『撒菱』を駆使し、配下を〈昏倒〉させてください。そうすることで『孤軍!!』『窮鼠!!』『逆境!』の効果を最大まで引き出すことができます。それまでの間に「黒結晶(再生)」は『再生』を使用します。PCが『妨害』してきた場合、アリスのエプロンが残っていれば、それを使って乗り越えましょう。また、「黒結晶(防壁)」は優先的にダメージを受けて倒れるよう立ちまわりましょう。
配下が〈昏倒〉してからは、7枚の手札のうち最低4回は主動作を確保できるようにしましょう。『再生』の効果を受けていれば手番時のHPは2以上を確保できるため、『鏖殺』で対象を2体とることができるのを忘れずに。
『屍毒』については、J以上の技能を通されたくない場合は《封印》、基本は《衰弱》(怠惰のアリスが3点ダメージになり、軽減を貫通できる可能性があります)、PCのHPが1になったら《猛毒》を与えましょう。また、もしJQKが大量に配布された場合は自分を《封印》し、2-4として使える札を増やすこともできます。
『仕込』については、『屍毒』を通し続けたく、封印対策が必要ならば「水パイプ」や「最高のバター」、素直に強い「免罪符」や「眠り鼠のポット」を取っても良いですし、PKの性格に合うのは「枯れた花輪」でしょう。このあたりから選んでみるといいと思います。
エピローグ
PKに勝利した場合
PKが判決の結果〈死亡〉している場合、または裁判終了時に殺す場合、黒結晶の力が失われ、結晶が粉々になってなくなります。森が再生するまでには時間がかかるでしょうが、少なくともこれ以上この力によって誰かが死ぬことはなくなります。
PKを生かす選択をする場合、そのままだと黒結晶の力を止めることはできません。この事件を解決するためには、コインを奪う、精神を破壊して心の疵の力を失くすなどをして、PKを無力化する必要があるでしょう。
拠点に戻れば、公爵家から感謝されます。今後しばらく困らない程度の報酬ももらえるでしょう。悪い救世主を倒したよい救世主であるとの評判が広まり、多数の末裔から頼られるかもしれません。
敗北した場合
基本的には、PC達は全員、身体が結晶に覆われ、絶望の中で死亡します。しかし、裁判で一人以上犠牲になっていれば、スティブナイトはあまり救世主の生死に拘りがありません。一人生き残ったら辛そうなPCだけ残し、他PCを殺してもよいでしょう。(悪意があるPKのため、そのようなよくないことをします)
可能な限り後味を悪くし、絶望的なシナリオにしましょう。
PKと戦わなかった場合
PCの好きなように演出してもらいます。裁判で一人以上犠牲になってさえいれば、スティブナイトはあまりPCの生死に構うことはありません。
救世主は全員死んだ方がいいとは思っていますが、自分が何もしなくても視界からいなくなってくれて、公爵家やこの堕落の国がめちゃくちゃになるなら、それをあえて止める理由もないでしょう。まあ期待もしていませんが。
PK「スティブナイト」
キャラクターシート:スティブナイト
出身世界も名前も性別も、何もかもが不明である、とされている救世主です。他の救世主とパーティを組まず、末裔も従えず、単独で行動しています。
「スティブナイト」という名前は公爵家から呼ばれているコードネームですが、名前を明かすことを拒み、そのように呼ばれていることを認識しています。その名前を自称することもあります。自身の悪評についても理解しています。その上で、改める気がありません。皮肉屋で、卑屈で、全ての人を見下しています。発言の全てに悪意があります。使える手段はなんでも使って加害をします。それで自分が多少傷付いたとしても、加害を躊躇うことがありません。
この世界に来る前に、裏切られて暴力を振るわれたことがあります。その時、自身の無力さ、弱さについて深く傷つき、トラウマになっています。そのためこの世界に来てからも他人に心を開かず、あらゆる手段を用いて単独で脅威度を上げて生きてきました。脅威度を上げ、強くなり、他者に暴力を振るい続けることによって自身の力を試し、そのトラウマを解消しているふしがあります。(当然救世主の責務も理由としてありますし、「他者嫌いで殺しに抵抗がないのでとりあえず視界に入ったものを殺している」といった理由もあります)
世界に対して希望が持てず、常に絶望しています。責務のこと、自身に危害を加えてくる救世主のこと、愚かで無力な末裔のこと、この堕落の国で起こる全てがスティブナイトにとっては無視できないストレスであり、そこから目を背けられずにいます。良くなる未来を信じることも、仲間と痛みを共有して解消することも、楽しみを見つけてそのために生きることも、夢や恋愛などの幻想の中で生きることによって痛みを紛らわせることもできません。生に希望や価値がないのです。とはいえ、死後の世界も信じていません。死が救いであるとも思えずにいます。唯一何か信じているとしたら、この堕落の国の救世主と末裔、亡者を全て殺した後の、30日の静寂です。(唯一の救世主になったとしても世界が書き換えられるとは思っていません)しかし、最後の一人になるまで自分が生きられるとも思っていません。
猟奇が5ありますが、この猟奇性は心の疵によって獲得したものであり、本人の物理的な腕力が強いわけではありません。人を躊躇せずに加害できる猟奇性が心の疵によって発揮されています。その力のほとんどは配下である黒結晶やそれによって作られた土地にあります。黒結晶の力を失わせれば、ほぼ無力になります。
心の疵「黒結晶」
体内に入ると肉体・精神に有害となる鉱石を生やして敵を傷付ける。周囲には黒く冷たく、美しい汚染地帯ができる。力がある救世主ですら、浴びると危険だ。
//誰も信じない。全員殺すべきだ。
キーワード:他者への絶望、世界への絶望
「こんな状況で仲良しごっこか、さぞかし余裕があるんだろうな」
「お前は何のために生きてる? それとも、こんなくだらない問いなんか考えなくてもいいくらい幸せな頭をしてるのか?」
黒の森を生み出している力です。近くにいると人や物の精神を汚染し絶望に染めて殺す黒結晶を生成します。
スティブナイトはこの世界に絶望しており、堕落の国で生きることに希望はないと思っています。また、他者を信じず、自身の邪魔になる存在だと思っています。PKは生きる理由について「他者を殺すため」と言いますが、そこまで殺しにこだわっているわけではありません。殺しても無意味で空虚であり、楽しいとは思っていないのです。
PC達が生きる理由や希望をPKに話すことで、抉れます。また、PC達の信頼を見せつけることによっても抉ることができます。
心の疵「朧」
何者であるかを知るものがいない。性別も、顔も。体格が変わったという噂もあるが、真偽は確かではない。近付いて生きて帰ってきたものはいなかったから。
//ずっと騙してきた。自分の肉体が嫌いだ。
キーワード:自分への絶望
「好きこのんでこんな身体に生まれる奴がどこにいる?」
「馬鹿でいられたらもう少し幸せだったろうな」
スティブナイトの情報がわからないのはこの心の疵の力によるものです。主に、幻覚を見せたり、幻聴を聞かせたりする力として発揮されます。PC達に、はぐれたような幻覚を見せ、PC達を分断し、1人を狙って加害します。(幻覚なので、実際に傷をつけるためには他の手段を取る必要があります)
また、この力によって自身の姿や声を偽り、PCや人々を惑わせたりします。他者に偽装して、さまざまな姿をとります。偽装していない場合は、中性的で性別の判断がつかない声と姿を持っているように見えることが多いかもしれません。
接触し、暴力などで調べることによって抉れます。抉れると、20歳前後の女性であることが明らかになります。スティブナイトはかつてのトラウマから、自身が女性であること、自身に物理的な力がないことについて、嫌悪感、劣等感を持っています。
疵抉りについて
以下のような方法でいい感じに抉ります。
情景描写で絶望感を煽り、黒結晶の力でPCの心を弱らせる(黒結晶を埋め込んでもよい)
黒結晶によって死亡した人の亡骸や、絶望に染まって死にゆく人をシーンに登場させる
過去の辛い出来事を思い起こさせる
心の疵「朧」によってPCの大切な人や別PCになりすまし、その人に言われたくないことを言う
絶望レスバトルをする
選択HOと疵抉り
あなたにはかつて共に戦った仲間がいたが、旅の途中で別れたか、死んだ。あなたにはその仲間に対して何かしらの感情がある。
→ 幻影でその仲間に偽装して抉りましょう。
あなたの知り合いがこの黒の森に行ったきり、帰ってきていない。
→ 黒結晶に覆われた知り合いの死体やダイイングメッセージを描写したりしましょう。死にかけの状態でPCと遭遇し、目の前で死ぬか殺してもいいと思います。
あなたは悪が許せない。今回の事件を起こすような悪い救世主は倒すべきだという強い気持ちがある。
→ 激詰めしましょう。堕落の国では正義感だけでは生きていけません。その正義感が自分を苦しめることになるのです。その何の意味もない偽善によって選択肢が狭まるし、裏切られもします。少なくとも、スティブナイトはそう思っています。同情心を煽るために、スティブナイトの過去の話を語らせてもいいかもしれません。
あなたはパーティー内の誰かに任意の感情を抱いている。
→ 対象者を抉って仲間割れさせましょう!
状態〈絶望〉について
PCを絶望させて無抵抗にし、PCの肉体に黒結晶を埋め込みます。
黒結晶が身体の内側や精神に届いていない場合はまだ戻れますが(〈絶望侵蝕〉中のPCはこの状態かもしれません)、一度〈絶望〉すると黒結晶の侵蝕を止めることはできません。
セッション用素材
本シナリオのプレイ及びリプレイ作品(Dead or Aliceのプレイ風景を再現する読み物や動画作品など)にのみ利用することができます。
カットイン……裁判前などのタイミングで使用できるカットインです。
あとがき
みんな~! 絶望、楽しめたかな~!?
いかがでしたか? これが堕落の国だと思います。
このシナリオの前に
「プロフ帳の救世主」などをやって絆を深めてからやるとよりお得です。
PKもこのシナリオで高めてから
だすうぇやります。