基礎知識
Dead or AliCe の舞台となる「堕落の国」の世界観を解説します。
概要
以下はすべて、プレイヤー及びキャラクターが既知として扱ってよい情報です。
最低限このセクションを読めば、キャラクターのおおよその状況を掴んだ状態でセッションに臨めます。
堕落の国
ネズミの穴より小さく、大宇宙より大きい。井戸の底より近く、地球の真ん中より遠い場所にある。歩くたびに世界が変わる、壮大で豊かな「不思議の国」……だったものです。アリスと呼ばれる異世界人の出現により動き出し、アリスが消えた瞬間を境に腐敗していきました。100年経った今、この世界は終末の危機に晒されています。

空はいつのときも晴れることなく、厚ぼったい雲の隙間から薄昏い色を覗かせています。海は濃緑の汚水に満たされ、変異した海獣たちが日々荒れ狂っています。地に植わる草木はほとんどが枯れきっており、新たに花を咲かせることは稀です。町や集落は点々と存在しますが、民草は飢えと病に苦しみ、失意を抱きながら日々を過ごしています。

何よりの脅威は自我なき亡者の群れ。亡者は至るところに蔓延り、かろうじて生き延びている人々を同族へと誘います。
招待
堕落の国が不思議の国へ戻るには、異世界人の協力が不可欠です。堕落の国にわずかに残った奇跡の力は"招待状"へと姿を変え、断続的に、様々な異世界人のもとへと舞い降りています。招待状に封じられているのは、巻頭のそれと同じ手紙と、10枚の六ペンスコイン。これを手に入れた異世界人は、内容を読み上げると同時に堕落の国へと転移します。

帰れる保証もなく。

強制的に。






救世主(アリス)
堕落の国へきた異世界人は総じて救世主(アリス)と呼ばれ、住人たちに崇められます。救世主は1人ではありません。大勢います。性別も年代も性格も出身世界も様々です。どのような者であれ、救世主としての正当性は所持している六ペンスコインの数によって決まります。多数存在する名ばかりの救世主を断罪し、六ペンスコインを集めるものこそが正しき救世主です。

また、この堕落の国では、「救世主が唯一となったとき、救世主はあらゆる物語を書き換えるチカラを手に入れる」……という噂が、まことしやかに囁かれています。

唯一の座を目指して他の救世主と殺しあうか。ただただ怯え逃げ惑うか。弱きを助くか。いたぶるか。それらはすべてあなたがたプレイヤー次第です。
救世主の出身世界
救世主は様々な時代の様々な異世界から現れます。現代日本や、剣と魔法の世界、人類の滅んだ未来など、救世主の数だけ世界が存在します。しかし、堕落の国に来た時点で出身世界での特殊能力は失われ、後述の"心の疵"による奇跡に置き換わります。言語の違いもありますが、基本的には通じるように変化します。通じない救世主がいても構いません。
厳密には何人いるの? 救世主の厳密な人数は決まっていません。1000人いる場合もあれば、残り3人しかいない場合もあります。GMは救世主の人数を厳密に設定しても構いません。断続的な招待も、いずれ奇跡の力が尽きて途切れることでしょう。
心の疵
救世主は例外なく心の内にトラウマ、あるいは異常性を孕んでいます。堕落の国ではこれを"心の疵"と呼びます。心の疵は堕落の国における力の本質です。元いた世界で無力だったとしても、疵を想うことで奇跡を発揮できます。発揮する奇跡は、炎を生成する、水を清める、攻撃を避ける、傷を癒すなど、救世主ごとに異なります。

心の疵を抉られると、救世主は奇跡を制御できなくなります。疵が癒えないまま抉られ続けると、やがて奇跡もろとも心を喪います。すなわち、亡者化です。強力な亡者の正体が救世主だったという例も少なくありません。

何故心の疵を持つ者が呼び出されるのか? 心の疵が奇跡の礎となるのか? それは謎です。傷つき滅びゆく国の意思と共鳴しているという説が最も有力ですが、はっきりとした根拠はありません。
亡者
国が堕落してから発生が確認された、彷徨う死者です。一般的なゾンビ、アンデッドなどの姿をとります。生前の姿を留め、人語に近い鳴き声を発する亡者もいれば、原型も残らないほどに変貌した異形の亡者もいます。自我なく、意思の疎通はとれません。本能的に生者に牙を剥き、死に追いやろうとします。

生者が亡者と化す原因は主に2通りあります。1つは、亡者に殺されること。もう1つは、前述の通り心の疵を抉られて死亡することです。
荒野
堕落の国の大半は荒れ果てた不毛の大地であり、生物らしい生物を見かけることはできませんが、かわりに亡者が蔓延っています。救世主は招待時、このような荒野へと転送されてしまうことがほとんどです。ですが心配には及びません。救世主には亡者に対抗するための心の疵の力があるのですから。

では、それ以外の人々はどうでしょう。堕落の国には救世主以外に、元からこの国に住んでいる 末裔 と呼ばれる人々がいます。残念ながら彼らは、そのほとんどが亡者に対抗する術を持ちません。末裔たちにとって、一人ないし数人で荒野を彷徨うことは、ほぼ確実な死を意味します。やむなく救世主の助けなしに荒野を渡る場合、少なくとも10人以上のグループでなければ最弱の亡者一体に遭遇しただけで全滅してしまうというのが一般的な認識です。できれば20人かそれ以上の集団で、可能な限り亡者との遭遇を避け、出会えば全員で襲い掛かって仕留めるか足止めの囮を残して逃げ、それでも半数が目的地にたどり着ければ運の良い方です。
町や集落
力のない者たちが普段どうしているのかというと、町や集落で生きています。末裔の町や集落は、かろうじて腐敗の進行が遅れている僅かな土地や、崖に囲まれ天然の要塞としやすい地形など、亡者が発生しにくい、または入り込みにくい場所に築かれています。お人好しな(もしくは何らかの目的のある)救世主によって防衛体制が敷かれている場合もあります。現在も堕落の国に残っている町や集落は亡者からの襲撃を実際に撃退したり免れてきたという実績があり、荒野に比べれば安全に過ごすことができるでしょう。ですから、休息のためにもまずはそうした町や集落を探すことが救世主たちの第一の目的となります。運が良ければ、招待時に直接、または付近に転送されるということもありえるでしょう。