パンのみに生きる
シナリオ制作:巫女瓜
内容にはシナリオのネタバレが含まれておりますのでご注意ください。
概要
傾向
このシナリオは、六ペンス10枚(脅威度1)のPC3人用、協力傾向のシナリオです。

それ以外の条件で遊ぶ場合、六ペンスの枚数と脅威度をPCの平均(切り上げ)に合わせ、配下と所持小道具の数を調整してください。
MODの適用
以下のMODを採用しています。
お茶会MOD『ラウンド変更』
お茶会のラウンド数は1となる。
お茶会MOD『PK追加行動』
PKの行動回数は3となる。
シナリオについて
どんなシナリオ?
『パンのみに生きる』は、救世主の成れの果ての巨鳥の亡者『飢え知らずのインゲル』を倒し、奪われた糧食を取り返すことが目的のシナリオである。
背景
『インゲル』とは、ぬかるみに落ちたパンを踏んで堕落の国へと来てしまった(パンが招待状であった)金髪の美しい少女の救世主である。

心の疵の異能として、“パンくずを無限に生み出す”という力を持っていた。生前は飢えた末裔たちに食糧を分け与える慈悲深き救世主として知られていたが、その実、『飢えた者に施すことで堕落の国から逃れることが出来る』という妄想に取り憑かれていたがゆえの行動である。

『飢え知らずのインゲル』は、彼女が亡者化した姿である。生前の妄念をなぞり、不気味な灰色の巨鳥は、食糧を奪っては、誰かにでたらめに分け与える。その過程で誰かがゴミのように死ぬ。また、周囲を底なし沼やぬかるみに変える力を持つ。今回の舞台である湿地帯はそれによって作り出したもの。

亡者の形状は強いて言えばカモメに似ている。また、片方の脚が鳥のものではなく、靴を履いた少女の脚に置き換わっている。これは生前のインゲルのものである。
ハンドアウトオプション
当シナリオには以下のハンドアウトがある。キャラクター作成前、いずれかを選ばせること。重複可能。

A:あなたは『灰色の鳥の亡者』を知っている。
B:あなたは救世主『インゲル』を知っている。
C:何も知らない。

また、以下のことについて説明する。該当するハンドアウトが誰にも選ばれなかった場合、しなくてよい。

『灰色の鳥の亡者』は、食糧を奪うことにこだわる鳥の亡者。
しかし、『灰色の鳥』は食糧を奪うだけではなく、時折飢えたものに与える姿も目的されている。
救世主『インゲル』は、パンくずを無限に生み出すことのできる救世主。施しの心を忘れない優しく美しい少女。

救世主インゲルについて知っている場合は、過去に共に旅したことがある、施しを受けたことがある、といった関係性に、灰色の鳥の亡者について知っている場合は、過去に襲われたことがある、施しを受けたことがある、といった関係性となるだろう。
進行
プロローグ
PCたちは、最近堕落の国にやってきた救世主のパーティー。現在は旅の途中。一行は、陰鬱な湿地帯に差し掛かる。慎重に歩かなければ、ぬかるみにはまってしまいそうだ。

ある程度道中の会話が弾んだところで、ボロボロになった隊商と出くわす。訊くならば、隊商たちは、近隣では『飢え知らずのインゲル』と呼ばれる灰色の鳥の亡者に襲われた、とPCたちに話す。食糧を奪われ、ほうほうの体で逃げてきたのだ。

このとき、プレイヤーたちがDead or AliCeのシステムに慣れていなければ、この隊商たちは こちらのチュートリアル盗賊団 だったことにして、1ラウンドで終了するチュートリアル裁判を行ってもよい。

隊商(盗賊団)に気を取られていると、突如巨大な灰色の鳥──『飢え知らずのインゲル』がPCたちの頭上から急襲する。

追い返したり逃げたりすることは可能。しかしこのとき、PCたちは必ずほとんどすべての食糧を奪われてしまう。ちなみに隊商(盗賊団)は亡者の出現に、蜘蛛の子を散らすように逃げていく。

食糧なしでは、前の街に戻ることも次の目的地にたどり着くこともかなわない。少なくともインゲルに奪われた食糧を見つけ、奪い返さないことには全滅は免れない。そのためには、『飢え知らずのインゲル』と『裁判』をする必要があるだろう、とプレイヤーに告げること。
お茶会
最初の行動を始める前に、救世主とPKが1回行動するごとに1日が経過するという扱いになると告げること。つまり、裁判までには3日かかるということになる。日にちが経つにつれ焦燥したり、空腹に喘いだりするロールをしてもらうことが望ましい。

シーン表は後述の湿地帯シーン表を使うこと。救世主たちは、インゲルを追ったり、食糧を隠した場所を探したりするロールが推奨される。
湿地帯シーン表
1D6 描写
1 沼と沼の間を走る飛び石や細い道。通り抜けるには時間がかかりそうだ。
2 枯れ木や流木、岩が集まったしっかりとした地面。戦うにも休むにも悪くない場所。
3 沼の水面すいめんに人の死体が浮かんでいる。何か漁れるものがあるかもしれない。
4 橋がかかっている。ほとんど壊れかけており、渡るのには勇気がいるだろう。
5 歩くたびに足を取られるぬかるみの道。なぜわざわざこんなところを?
6 湿地帯の端にそびえる切り立った断崖。落石に注意。
裁判
食糧の隠し場所(シーン表6の断崖を想定)を見つけた救世主と、追い詰められたインゲルとの戦い。
PKの行動指針
『眠り鼠』や『ドリンクミー』で不調を与え、『コーカスレース』『胡椒の雲』で削るのが基本。配下の有象無象は『コーカスレース』『胡椒の雲』に巻き込まれて死んでしまうので、手番まで生き残っていればインゲルより先に動いて『再生』をかける。

『仕込』で入手するのは『水パイプ』。不調使いがいなければ『こしょう』『おくすり』のいずれかから好みで。
エピローグ
勝利した場合
救世主たちは食糧を取り戻すことが出来、旅を続けられるだろう。インゲルの処遇はプレイヤーに委ねる。

もし、亡者インゲルと救世主インゲルの関係について気になっているPCがいるならば、ランダムな能力値で判定をさせ、成功した場合、以下の文面が書かれたボロボロの手紙が食糧の隠し場所から見つかることにしてもよい。
どうしてこんな国に来てしまったのか、
何を為さなければならないのか。
誰もわかっていないみたいだった。

でも私は知っている。
私達はみな罪人であり、
罪を濯ぐことだけが唯一、救われる条件なのだと。

私の施したパンくずが、堕落の国の天辺に届く量になったとき、
私の罪は赦され、魂はカモメの形になって
このぬかるみの底を脱するだろう。

それはもう少しだったのに。
もちろん、全てインゲルの妄想である。
全滅した場合
食糧はもちろん取り戻せず、インゲルの姿もない。全員発狂しているものとして亡者化の確認処理を行う。
PK『飢え知らずのインゲル』
キャラクターシート

灰色の巨大な鳥の姿をした亡者。食糧を奪い、誰かに分け与えることに固執する。
「クエエエエエエ!!」などと鳴く。
行動の演出例
あえて奪った食糧をちらつかせ、罠にかけようとする。
翼で風を起こし、移動を妨害する。
おぞましく甲高い鳴き声を上げ、スズメの亡者をけしかける。
上空からチョコボールめいた無数の泥の弾丸を吐き出して爆撃してくる。
あたりが影に包まれたと思ったら、空から急襲する巨体が!
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