PCたちは、堕落の国へと招待されたばかりの救世主です。幸運にも帽子屋の末裔に保護されて町へ向かうところでしたが、その道中で猫の亡者を目撃します。猫の亡者は度々町を襲撃しており、町は崩壊の危機に晒されています。

実はこの猫の亡者は、町に住む働き者の子どもでした。馬車で隣町に向かう最中に亡者に襲われ、亡者と化したのです。猫の亡者は生前の帰巣本能に従い町へと向かいますが、生者と亡者が相容れることは決してありません。町の住人もそれを理解しており、かつて愛した子どもの現状に胸を痛めています。

作成されたキャラクターシートは事前によくチェックしましょう。【猟奇】による攻撃、【才覚】による妨害、【愛】による防壁＆回復を1人ずつが担当すれば、生存率がぐっと上がります。もし役割が足りていなかったり、偏りすぎている場合は、それとなく教えてあげてください。

このMODは『PCが存分に手番行動のチュートリアルができる』かわりに『PKがPC全員の心の疵を狙える（PCが存分に横槍のチュートリアルができる）』ことを意図したものです。そのため、適用する場合は可能な限りPC全員の心の疵をまんべんなく狙ってあげてください。

ここでは、PCたち堕落の国に招待された直後を描きます。互いに状況を確認するなら、PCたちは全員、手紙を読んでいたらここへ飛ばされたということが判明します。また、手紙とともに奇妙なコイン（＝六ペンスコイン）を所有していることにも気づきます。

幌馬車の外に目を向けると、帽子を被った御者らしき者が一礼します。次いで視界に入るのは、薄暗い曇り空と枯れた木々、荒れ果てた大地。御者は帽子屋の末裔『クロッシェ』と名乗り、荒野に放り出されていたPCたちを偶然見つけて町へ運ぶ最中だったことを伝えます。加えて基礎知識の『堕落の国』『招待』についても話します。

「おかわいそうに、あんたがたもこの国に招かれてしまったんだね。もう少し行けば町につくよ。町というには貧相なものだが、状況を整理する余裕くらいは生まれるだろう」

会話が進んだら、岩陰から賊の群れが姿を現します。賊はPCたちが救世主だと察し、所持しているであろう六ペンスコインを奪うために襲いかかります。

ここでは、こちらのチュートリアルPK を用いて1ラウンド限定のチュートリアル裁判を行います。判決表を振っても〈死亡〉せず、HP・前科・小道具・心の疵などのデータは裁判終了時に元に戻ります。プレイヤーに伝えて、裁判のおおよその流れをレクチャーしてください。

各自手札を捨てて1ラウンド目が終了したら、逃げる隙が生まれます。クロッシェがPCたちへ馬車に乗り込むよう促し、そのまま真っ直ぐ駆け出していきます。

逃げる最中、背後から盗賊たちの悲鳴が聞こえます。馬車は真っ直ぐ町へ向かいますが、振り返るならば、巨大な猫のぬいぐるみが佇み、牙の生えた尾っぽで盗賊たちを喰らう様を目撃します。猫はボタン状の瞳でPCたちをじっと見つめていますが、目の前の獲物を優先しているからか追う気配はありません。

PCたちを乗せた馬車は、『三叉街路』へと突入します。

三叉街路は、末裔たちの住む町のひとつです。広場を中心に、三つの路地がYの字状に伸びていることからこの名がつきました。帽子屋、三月兎、公爵夫人の末裔が各街路を取り仕切っていますが、末裔同士の結束力は強くありません。

クロッシェはPCたちを三叉街路の宿に案内し『基礎知識』の残りの内容をすべて話します。更に、この町は先ほどの猫の亡者『ジャック・イン・ザ・キャット』に狙われているため、はやく別の場所へ移動したほうがいいとアドバイスします。

ここで、ジャック・イン・ザ・キャットのPKシートを公開してください。

PCたちは戦うにせよ逃げるにせよ、この町で情報を収集し、準備する必要があります。そして、いざ発とうというタイミングでジャック・イン・ザ・キャットに襲われてしまうのです。

プレイヤーには、町の中で過ごしながら裁判の準備をするように伝えてください。シーン表はルールブック付属の普通の街シーン表を使用します。

遠慮なく襲撃し、抵抗してもらいましょう。過剰に疵の力を使わせることで疵が抉れます。

PKの疵を抉る際は、こちらを先に抉ってもらうようにしてください。成功すれば、クロッシェから以下の話が聞けます。もし抉られなかった場合は、エピローグに開示しても構いません。

話し終えると、クロッシェは力なく項垂れます。
「あの子はただ町に帰りたいだけなのかもしれない。なのに我々はあの子を追い返すことしかできないんだ」

PCたちが街中にいる、あるいは逃げる準備を整えたタイミングで、町全体が大きく揺れます。三月兎の路地方面の外壁が尾っぽに破られ、ジャック・イン・ザ・キャットが姿を現します。ジャック・イン・ザ・キャットは建物にじゃれつき、破壊して回り、PCたちを発見して襲いかかります。

早めに『巨大化』を使用して威力を確保しましょう。『ニヤニヤ』『かんしゃく』『大洪水』を組み合わせれば、1D6+11点のダメージを全員に与えることができます。配下の『仕込』で入手する小道具は、水パイプか日刻みの時計がベターです。

『猛禽の翼』は、手札に関わらず『妨害』が使えるイカサマです。愛型PCの『回復』や、猟奇型PCの攻撃技能に割り込んで行動を失敗させましょう。

ジャック・イン・ザ・キャットは動かなくなり、町に平穏が戻ります。PCたちはこのまましばらく町に滞在しても構いませんし、旅立っても構いません。

ここからの物語は不思議の国のアリスの一文のとおり『あなたがどこへ行きたいかによる』（That depends a good deal on where you want to get to）のです。

PCたちが〈昏倒〉している間に、ジャック・イン・ザ・キャットは三叉街路を破壊して姿を消します。PCたちは奇跡的に生き延びますが、他に生存者はいません。

目覚めたPCたちは、全員〈発狂〉しているものとして亡者化の確認処理を行ってください。

ジャック・イン・ザ・キャットはチェシャ猫の亡者です。
ぬいぐるみのような胴体に、巨大なしっぽ。その先端には、不気味な泣き笑いがふんわりと浮かんでいます。